木村雅美
第4回:木村雅美(実行副委員長)

寄せる思い

審査委員会・実行委員会の方々に、岩手県の住環境・自然環境・エコハウスなどについて、「寄せる思い」を語っていただくコーナーです。第4回目はエココン実行副委員長で東北住建株(株)社長の木村雅美さんです。
(東北住建の「住建フェア」会場にお伺いしてインタビューいたしました)

Q. 本日は東北住建の「住建フェア」ですね

今回の住建フェアには一般のお施主さんではなく、ビルダーさんや設計さんをお招きしています。割合としては、ビルダーさんと設計さんが4:1か5:1くらいでしょう。その中でエココンに応募している人は、1割無いでしょう。現在、岩手県内で同じような住宅フェアをやっているのは5社あるかどうか。このような会場で、エココンのパンフレットを配布したり、できればブースを出して普及活動をするのは大切だと思います。

今日お越し下さる350人ほどの方々でも、高性能な住宅について熱心に勉強しているトップランナーの人達と、そうでもない人達に分かれます。それは、提供する商品としての住宅で、何を訴求ポイントにするかという点で、スタンスが異なるからでしょう。

「家を売る」という事を考えた場合、お施主さんの資金事情や「志向・アミューズ」みたいなものがあって、それに「どういう形で応えられるか」が「売るためのポイント」であって、そのアミューズの中に必ずしも「性能」は入ってこない。

住宅営業の方にうかがうと、多くの場合、「性能」を一番最初に持ってくれば、お施主さんは腰を引いてしまうそうです。手持ちのお金や調達できるお金で、自分が夢に描いているものが手に入るかどうかが、お施主さんにとっては重要だからです。夢に描いている物というのは、「見栄えがいい」とか「使い勝手がいい」とかいうことで、ビルダーさんも「家を売らんかな」と思うと、住宅の熱的性能の説明など後回しにしてしまう。お施主さんは価格だとか、便利な設備機器だとかに目がいって、性能までは気が回らないものだというのが業界の常識です。

Q. 性能というのは一番前に出す物ではない?

どっちが必要条件になるか、十分条件になるかということですが、本来ならば「性能」が必要条件で、その他の要件が十分条件。これからの社会形成を考えていくと、それが重要なことだと思いますが、実際には、逆になっています。「楽しい家造りをどう演出するか、予算にどう合わせるか」ということに関心があって、性能というのは犠牲にされる側に回ってしまうというのが現実です。

例えば潤沢な資金があって、坪50万円が当初の購入目安で、坪60万円が予算限界だった場合に、「自分でこういう家具を取り付けたい、こういう壁仕上げをしたい」となって、予算限界一杯になってしまった場合、「じゃぁ性能は?」となると「性能の方はいいよ」となってしまう可能性が高い。一般的に言えば、昔の隙間の多い断熱材もろくに入っていない家と比べたら、今はどんな家に入ったって、「(昔より)良い家」となってしまう。そこにお客さんが満足してしまう。一定の性能確保をこれからの住宅の必要条件とすることと、家が売れるための必要条件を求めることとでは、必要条件の意味合いが異なります。

Q. 性能というのは目に見えないもの?

本来、住宅の熱性能というのは「社会的な基準」として、はっきり打ち出されるべきものだと思います。国が出してくるエネルギーの基準は6、7年ごとに見直しがあって、そのたびにグレードが上がっていきます。それには「現実世界との妥協」というのがあって、大手の住宅供給業者の事情を考えたり、大工、工務店さんの事情に配慮したりする。その現実的な妥協によって、「過渡的なライン設定」がなされてきました。

これはある程度仕方がなかったと思う面もあるけれども、サステナビリティの確保で待ったなしの今世紀に入ってもう10年になるのだから、どこを「21世紀的な最終基準」にするかということについて、国民的なコンセンサスみたいなものが生まれる必要があると思います。そうでないと、ガイドラインがいつも中期的な過渡的なものになってしまい、基準変更のたびに、それまで建ててきた「好い性能の住宅」が陳腐化し、今世紀に残すには好ましくないものになってしまいます。

住宅というのは「地域特性」というのがはっきり反映されるべきものです。全国規模で考える大手メーカーの場合、「地域特性に合った配慮」というのは、実はなかなか難しい。関東・関西のような大マーケットを中心とした商品開発をして、岩手のような小さい市場用のものなどは、作らない。大量生産メーカーにとって、微少マーケットのための商品開発はコスト的に見合わないはずです。それぞれに固有の環境条件を持つ地域に住む、それぞれのお施主さんのことを考えた場合、量産という資本の論理に従って開発され、供給される住宅を選ぶというのは、本当は不幸な話だと思います。

Q. 岩手の場合は?

エココンは「地域スタンダードを社会基準として明確に作る、それをデファクトスタンダード化する」という活動をしていくことに意味があると思いますが、難しい問題もあります。

県の住宅行政というのは、国交省の指針に抗い難い。そうすると「国のやっていることが持っている矛盾」そのものを引いた形で、岩手でやるという形になってしまう。そうすると、エココンの目指していることと、どこかで齟齬が生じる可能性がある。エココンでの熱性能基準をデファクトスタンダードにしようとしても、公的な権力がそれを認容しない、むしろそれを否定するということになると、世間からエココンは何をしてるんだろう、となってしまう可能性もあります。

岩手県には寒地区分で、1地域、2地域、3地域と3つともある。エココンは性能値の基準として、県内統一してQ値1.6でやろうとしていますが、それは「1地域基準」を全県スタンダードにしようということで、これは近未来での熱性能基準の引き上げを考慮すれば、ひとまず妥当なところだと私は思います。もちろん県単位の地域区分よりも、もっと細分化した地域区分があって好いし、Q値1.6を最低基準とし、その地域特性に応じて必要な性能を付加すれば好いわけです。これからゼロエミッションの徹底を目指し、Q値1.0住宅など、もっと高性能な住宅を求める声が高まるかも知れませんが、Q値1.6住宅というのは、技術的にもコスト的にもそう突飛な話ではない。

技術的に作りやすく、価額的に購入しやすいもので、既存の住宅の建て替えを早急に促進することが、実は環境保全や社会経済面で最も実効性が高いのではないかと思っています。もっともこのような判断には過去のガイドライン設定時の現実的妥協と同様の部分があり、この辺りで、22世紀を見据えた壮大なシミュレーションが行われ、21世紀でどうすることが最適解か、示して欲しいとも思います。エココンでの基準値設定は、現時点で見通せる範囲での最適解ということで、性能に関する最終解はシミュレーションの結果から決定されるべきと、留保しておかなければなりません。

Q. Q値1.6というのは難しい話ではない?

私たちがサポートすれば、それほど難しいことではないと思います。どういうものを使えば予算を抑えられるのか、どういう使い方をすれば気密が取りやすいかなど、様々なノウハウや実験結果を持っています。大学の研究室との連携や、独自に試したりして、「どう作ればよいか」というところは一応分かっているつもりです。

Q. エココンでは作った物に対するコンテストをしていますが、「どう作るか」というところまでやっていく?

これは私が前から話をしていることですが、エココンの大賞に選ぶべき住宅は「模倣しやすいもの」であるべきだと思っています。そこでのノウハウは「基本的にオープンにしてもらう」というのが高性能住宅の普及という点で大切です。だから意匠的に非常に凝っているとか、性能がいたずらに高いというのは、本来の「社会的な目的」からしたら、ちょっとずれた話だと思います。「高性能でリーズナブルな価格の家」が「こんな風にすればうまくできる」ということをむしろ評価して、それによって普及を促すことが大事だと私は思っています。これはエココンの社会的存在価値を高めることでもあります。

Q. 模倣しやすい家でリーズナブルなものが岩手に広まると?

施主にとって、とても幸せな話だと思います。「岩手型住宅」というのは、本来はそこをやらなければならないと思いますが、県の「岩手型住宅」というのは、そういうのとはまたちょっと違う方にいかないかと危惧します。

例えば「県産材」をよく使おうという話ですが、「県産材を10立米以上使えば20万円の補助が出る」というものの、実際に35坪とか40坪とかの、一般によく建てられる住宅で10立米を使えというと、本当にとことんよく使わないと10立米にならないし、県産材の供給状況の問題もあります。現在の県産材の弱点は、価格問題というよりも供給の安定的信頼性にあるからです。

建築現場の進捗に合わせて、必要なモノが必要な時に適確に入手できるかというと、そこが覚束ない。そこでとことん県産材の使用にこだわっていたら、工事の予定が立たず、現場がスムーズに進行しません。補助金を現行の半分にするが、義務づける県産材使用量も半分にした方が、現実的で無理がなく、かえって県産材消費が増えるのではないかと、弊社の木材担当者が話しています。

Q. エココンの目指すべきところは?

岩手県が設定した「岩手型住宅」の性能に関するレベルというのは、そんなに高いものではありません。その上にエココンのレベルがあるから、最小限、岩手では岩手型住宅レベルを満たして、その上のより進んだ「トップランナーが応募する会がエココン」だ、と県の方の理解も得て、位置づけを社会的に明確にできるかどうか。そして結果として、トップランナーに追随する住宅供給業者が輩出し、エココンのレベルを文字通りデファクトスタンダード化してしまえるか、といったところだと思います。

住宅市場の先行きを考えれば、供給業者の淘汰競争は激化しても緩和されることはないでしょう。そうとなれば何らか社会的お墨付きのあるトップランナーになりたいという心理が強く働くはずです。エココン参加業者なら「先進技術を模倣でき」、「いろいろなノウハウを共有」しているので、施主は彼らからなら、コストパフォーマンスの好い、高性能住宅が安心して入手できるということになります。

Q. 「模倣しやすい住宅・同じような住宅」というのは売れるんだろうか、欲しがるんだろうかという疑問がありますが?

新住協の一番のすばらしい発明は、新在来工法です。「模倣しやすい住宅」とはあのようなものだと思います。そもそもの新在来工法というのはきわめてシンプルでベーシックなものです。その基本工法に自分でオプショナルな工夫を加え、オリジナル住宅として打ち出している工務店、ビルダーが沢山います。エココン推奨住宅もそういう形がいいのだと思います。そういう基本になりそうな家を積極応募してもらって、それを大賞にするというのが、私の願っているところです。

また忘れてはいけないポイントは、躯体の熱性能がしっかりしていれば、相対的に暖冷房等の設備が軽装備で好いということ。イメージしているのは、そういうものをはっきり感じられるもの。意匠については個々の主張でやったらいいと思います。個々の家造りでは町並みや景観への配慮も必要になるはずです。工法や仕様、熱性能が共通しても、提供される家が意匠的に同じになることはないでしょう。現実の住宅販売で熱性能での差別化を訴えたいなら、それはそれで一向に構わないわけですが、エココンが担う役割は単なる熱性能競争ではないはずです。

Q. これからのエココンに求める物、期待するもの?

エココン活動の本質は、実はマーケティング機能だと思います。これはいたって社会的な啓蒙普及活動であり、その目的を効率よく早期に達成するための戦略企画室がエココン実行委員会です。今は目指すところを「トップランナー」という形で明示しようという段階ですが、「当地では、その先導性というものが一般化している」という状態に早くしなければならない。21世紀に生き残る工務店というのは「エココンの認定を受けている」ということが必要なのだと思います。